中小規模の温泉旅館の事業再生についての概要(借入金をまとめるExcelファイルを無料提供)

【2023/11/24 更新】大幅リライトしました。

こんにちは、東北の温泉旅館再生コンサルタントの島田です。
今回は、中小規模の温泉旅館・ホテルの事業再生について考えてみましょう。
※ 温泉旅館の事業再生に関しては、各旅館が固有の事情を抱えており、一般論的な解決策を提示することは本来適切ではありません。しかし、新型コロナウイルス感染症の拡大時に借り入れた負債の返済が始まっており、多くの事業者が資金繰りに苦しんでいる現実があります。
この記事が、そうした事業者の一助となることを願って執筆しています。資金繰りで困難を抱えている場合は、ぜひ電話やメールでご相談ください。私たちは皆様のお力になるために存在しています。

※借入を一元管理するためのExcelファイルは、中段の「■■金融支援について」を確認ください。


著者:ハンズバリュー株式会社 代表取締役 島田慶資
経営コンサルタント・作家
長岡技術科学大学 大学院 経営情報システム工学修士
経済産業省推進資格 ITコーディネータ
個人情報保護士
この記事は随時更新しています。ブックマークをおすすめします。


キーワード:東北,中小規模の温泉旅館,ホテル,宿泊施設,財務改善,コスト削減,人件費管理,料理原価,金融交渉,収益増強,ターゲットマーケティング,オンライン露出

リード文:経営の世界では、現金の流れがすべてを決定します。しかし、多くの温泉旅館では資金管理が十分に行われていないのが現状です。経営改善のためには、どのように資金を効率的に運用し、コストを削減するかが重要です。この記事では、温泉旅館の経営者が直面する財務上の課題と、それを解決するための具体的な方法について解説します。


■ 再生に必要な2つの主要ポイント

温泉旅館の再生には、以下の2つの要素が同時に進められる必要があります。

  • 財務体質の根本的改革
  • 売上の回復

上記の要素は、温泉旅館の成功のために欠かせないものです。
『財務体質の根本的改革』では、経営の持続可能性を確立するために、無駄な経費の削減や効率的な資金運用が求められます。

一方で『売上の回復』は、市場での競争力を維持し、事業を拡大するために重要です。
ターゲット顧客への魅力的なサービス提供やマーケティング戦略の強化が含まれます。

両方の側面は相互に依存し合い、片方だけでは十分ではありません。

『財務体質の改革と売上の回復は、同時に進められるべき両輪である』という考え方が、温泉旅館再生において重要です。

■■ 財務体質改善の核心

温泉旅館の再生において「財務体質の抜本的な改善」が必要不可欠です。
財務体質を抜本的に改善して現金の流れを最適化します。

当然ながら、支出を最小限に抑え、収入を最大化することを目指します。
この収支バランスを正に保つことが極めて重要です。

財務体質の抜本的な改革を実現するためには、主に二つの方策が考えられます。
一つは金融機関からの支援を求めること、もう一つは経費削減です。

金融機関に支援を求める場合、再生計画の提出が必要となります。
金融支援と経費削減を同時に進めることも可能ですが、金融支援のみに先行するのは適切ではありません。

再生計画の妥当性や実現可能性は厳しく審査されます。
事業再生の初期段階ではまず経費を削減し、経営負担を軽減します。
負担を軽くして再生計画の妥当性を高めなければなりません。

そこには、社長の努力や覚悟が明確に反映されます。
社長の努力や覚悟がなければ、計画書も絵に描いたようです。
金融支援は期待薄になります。

まず取り組むべき経費削減の中でも、特に人件費と料理原価は旅館経営において重要なポイントです。
多くの旅館にとって難しい課題かもしれませんが、これが赤字を和らげ財務体質改善に繋がる鍵となります。

■■■料理原価の削減について

❶経費の見直しと料理原価の削減

経費削減は、不要な支出を削減することで、効率的な経営を実現するための重要なステップです。
特に、人件費と料理原価の見直しが重要であり、料理原価は20%以下に抑えることが最適と考えます。

料理をウリとしている一部の旅館では料理原価を広告宣伝費と捉えていますが、「料理原価をいくらかけても良い」という考え方では、一向に料理原価を下げることはできません。
したがって、工夫により20%以下に抑えることが理想的です。

❷日本政策金融公庫の統計に基づく分析

おおよその目安は、日本政策金融公庫の資料にまとめられており、そこから抜粋すると、以下の数値が示されています。

飲食店や宿泊業に関する従業者規模別の情報は、PDFファイルで提供されており、詳細は「PDFファイル従業者規模別(PDF形式 391KB)」をご覧いただければと思います。

従業者規模別の売上高総利益率 (%)は次の通りです。
1~4人: 80.4、5~9人: 81.9、10~19人: 81.5、21~49人: 78.4
出典: 日本政策金融公庫「小企業の経営指標調査」 (取得日: 2023/11/24)

さて、原価率は商品やサービスの総販売価格に占める原価の割合を示す指標であり、売上高総利益率は、総販売価格に占める利益の割合を示す指標です。
したがって、この2つの指標は裏表の関係にあり、原価率が高いほど、売上高総利益率は低くなります。

そのため、原価率 (%)は次のようになるでしょう。
1~4人: 19.6、5~9人: 18.1、10~19人: 18.5、21~49人: 21.6

従業員数の少ない温泉旅館ほど原価は低い傾向にあります。
すくなくとも平均値ほどまでは引き下げる努力が必要になるでしょう。

❸料理原価の精緻なコントロールを実行するためには…

料理原価のコントロールは、料理長、社長、女将が毎月料理原価を精緻に管理し、朝食や夕食のコストを社長のトップダウンで指示することが重要です。

社長のトップダウンがなければ、原価を効果的に抑制出来ません。
社長は絶対に板場に足を踏み入れて改革をおこすべきです。

■■■人件費について

財務体質改善において、避けられない課題の一つが人件費の見直しです。
これは非常に厳しい決断をしなければなりませんが、温泉旅館を再生するためには必要な過程です。

各従業員の雇用契約を精査し過剰な給与支払いがないか、またベテラン社員が実際に付加価値を提供しているかを検討することが重要です。

年配の従業員にはパートタイムや時短勤務を提案しましょう。
旅館全体の収支バランスが整うまでしっかりと手を入れるべきです。
人材管理と賃金体系の見直しは、温泉旅館の再生と持続可能な経営にとって不可欠な要素だと考えます。

旅館の経営者や女将から「お客様のおもてなしをするためには、既存の従業員さんは必要である」と相談を受けることがあります。

しかし、収支がバランスしていない現状では、まずはサービスの提供可能性よりも収支のバランスを優先するべきです。

人員が削減された状態で、どのようなサービスを提供できるかを考える方が建設的です。
厳しい現実ですが、売上を短期間で急回復させることは難しく、事業の継続には収支のバランスを整え、金融支援の獲得に注力することが不可欠です。
(再生の手前で相談いただければ打ち手は数多く残されています…再生のタイミングでは打ち手は限られていることが多いです)

■■金融支援について

現代の金融環境において、金融機関は返済スケジューリング、いわゆるリスケに比較的寛容になってきています。
しかし、それでも返済を遅延させる中小企業に対しては厳しい評価が下されます。

したがって、これらの経費削減策を行うことで経営状況を改善し、金融機関との交渉においても支援いただけるような姿勢を見せることが重要です。

経費削減だけではなく、

❶資金繰り表の精緻化のまえに、返済計画をExcelでまとめる

多くの温泉旅館で資金繰り表の作成が行われていますが、しばしばその精度に課題があります。
そのため、最初に取り組むべきは金融機関への返済を一元管理にすることです。

金融支援を受けている融資とそうでない融資が複雑に絡み合い、予想外の返済額の増加が発生することがあります。

特に新型コロナウイルス感染症の拡大に伴う需要喪失時には、多額の赤字補填融資を受けたため、複数の金融機関からの融資が増加しました。
多く本数の融資について借り換えが頻繁に行われ、返済計画が不透明になることが一般的です。
経費は節約を心がければ大きな変動は少ないものの、返済額は予期せぬ急増を見せることがあります。

このため、資金繰り表作成時には返済計画を一本化したまとめ資料が必要です。
経費と返済の両方において正確で実用的な資金管理が可能になります。

返済期間や毎月の返済額の推移、そしてそれに伴う返済能力の評価は事業継続において極めて重要。
上記の情報を明確に管理するためには、エクセルシートの作成と活用が強く推奨しています。

返済計画の全体像を一目で理解し、効果的な資金繰り戦略を立てることができます。

上記のExcelファイルは、次のリンクからダウンロード可能です。活用してください。
中小規模の温泉旅館の事業再生についての概要(借入金をまとめるExcelファイルを無料提供) (0 ダウンロード)

参考文献

  • 日本政策金融公庫. (2023). 小企業の経営指標調査. 取得日:2023年11月24日,https://www.jfc.go.jp/n/findings/pdf/sme_findings2_202302_08c.pdf.

良くある質問と回答(コメント欄でもお待ちしています)

  • 質問「銀行との交渉にコンサルタントが同席することは可能でしょうか?」
  • 回答「経営コンサルタントが同席することは可能ですが、社長様自身が計画を報告し、金融支援を依頼しなければなりません。経営コンサルタントが同席し、積極的に発言すると、社長様が提出した計画の実効性が疑われる可能性があります。そのため、経営コンサルタントがバンクミーティングで同席する場合でも、社長様のサポート役として、不明点を明らかにする役割が求められます。

    社長様の経営改善や事業再生の場面では、社長様自身が再生を達成する強い信念と覚悟が不可欠です。他人任せの姿勢では、金融機関からの信頼を獲得することは難しいでしょう。」

著者および相談窓口について

ハンズバリュー株式会社
代表取締役 島田慶資

この記事に関するご相談は以下の窓口までお願いいたします。

  1. 電話:023-674-0797 (受付時間:平日10時~16時)
  2. メール:メールフォームからご相談ください ( メールフォーム)

ご相談いただく際には、記事のタイトルとURLを明記いただくようお願いいたします。
© 2023 ハンズバリュー株式会社 All rights reserved.

著作者情報

経営コンサルタント@津名久はなこ
経営コンサルタント@津名久はなこ経営コンサルタント
ハンズバリュー株式会社の経営コンサルタントです。
新卒からコンサルタントして修行中!
「心をつなぐ仕事」の信条に則り活動しています。
よろしくおねがいします。